「バカバカしい……帰ろうぜ」


高広の言葉で、私達は教室を出た。


この後、何が起こるかなど誰も知らずに……。





学校から帰った後、私はいつものようにのんびりと時間を潰し、明日の準備をしてベッドに横になっていた。


理恵と眠くなるまでメールをする。


いつも通りの何も変わった事のない夜。


そう思っていた。


『明日香は、赤い人って本当にいると思う?』


珍しく、怖がりの理恵から怪談話を振ってきた。


いつもなら、私が怪談話を始めたらすぐに止めようとするのに。


『わかんないけど、でも、昨日遥がひとりでレポートを提出しに行ったんだよ。その時に赤い人を見たのかもしれないね』


その文章を打ち込んだ時、胸がチクッと痛んだ。

そうだよ……私が一緒に行っていれば、遥があんな冗談を言わなかったかもしれない。


『そうなんだ……でも、赤い人ってどうして赤いか知ってる?』


何だか今日の理恵はヤケに乗り気だ。


どうして赤いかなんて、そんなの考えなくてもわかる。


『血で赤いんじゃないの? もうこの話はやめよう』


怪談話を考えるのは、あまり好きじゃない。