「こんにちは、お邪魔しました」


とりあえず、帰るつもりだから、そうあいさつをした。


すると、おばあちゃんは驚いたように辺りを見回し、私達に気づいて近づいてきたのだ。


「明日香、なんか近づいてきたよ? あいさつなんかしなくてもよかったのに」


留美子はそう言うけれど、そこの住人がいるんだから、あいさつはしなきゃいけないと思う。


「あら、あんた達は健ちゃんのお友達? お見舞いに来てくれたんかい? ちょっと上がっておいき、美味しいお菓子があるで」


「あ、あの、私達はこれから学校に……」


「隣のヨネさんにもらったもんがあるでよ。私ひとりでは食べ切れんのだわ」


私の話はまったく聞いてない。


留美子の言う通り、無視をすれば良かったと、今さらながら後悔した。


とは言え、おばあちゃんの誘いを無下に断る事もできずに、私達はおばあちゃんが住む、平屋の方にお邪魔する事になった。


最初はめんどくさがっていた留美子も、おばあちゃんと話をするうちに気が合ったのか、ニコニコしながら会話をしている。


「お茶がなくなったで、ちょっと台所に行ってくるわ。あんたらはジュースの方がええかの?」


そう言いながら、私達の返事も待たずに部屋を出ていくおばあちゃん。