高広を意識するあまり、留美子と肩がぶつかるくらい近くで歩いていた。


そして、留美子が示した交差点を曲がり、最初に見えた家。


それが健司の家らしく、私達はその立派な門構えの家にゆっくりと近付いた。


古い平屋の民家の横に、新築の民家。


広い敷地の中に、二件の家が建っていたのだ。


「うわっ、土地だけは無駄にあるね……広いじゃん」


留美子の率直な感想はそれ。


門の前に立った私達は表札を確認した。


「杉本」と掲げられた表札が、ここが健司の家だという事を教えてくれている。


「まあ、とにかく中に入ろうぜ」


そう言って門をくぐる高広の後に続いて、私達も敷地内に足を踏み入れた。


新築か、平屋か……悩んでいる私達の前を、微塵も悩む素振りを見せずに新築の家屋へと向かう高広。


「ちょっと、高広! あんた何でそっちに行くのよ!」


「あ? 留美子、お前はアホか? 健司はどう考えても新築顔だろ」


いや、さすがに今のは意味がわからないよ。


私にはどの辺りが新築なのか、全く理解できないから。


「……出ねぇな」


新築の家の玄関前に着き、何度もチャイムを押していた高広が、キレ気味にドアを蹴飛ばした。


人の家なんだから、そんな事をするのは止めてほしい。


高広になら、いつもなら言える言葉も、留美子が言った言葉のせいで今日は言えない。


「ちょっと、高広! 蹴ってどうすんのよ!」


高広を押しのけ、留美子がドアノブに手をかけて、それを回してドアを開けたのだ。


「あれ……鍵かかってないじゃん。チャイム鳴らす必要なかったね」