「健司! どきやがれ!」


高広が怒鳴り付けるが、健司はニヤニヤと笑みを浮かべたまま……まったく動じていない。


やっぱり、この健司は違う。


明らかに操られているというのがわかる。



「み、み、美子ちゃん……ふ、服を赤く……で、できるよ」


そう言って、ジリジリと私達に詰め寄ってくる。


美子ちゃん?


健司は、「小野山美子」の事を知らないはずだ。


やっぱり……何かに操られているの?


この健司を避けて通るには、工業棟の廊下を北側に抜けて、もうひとつの渡り廊下から生産棟に入るしかない。


でも……それはかなりの遠回りで、カラダを持ちながら走るなんて、私では体力的に無理だ。


途中で必ず追いつかれる。


それに、「赤い人」もいる。


どうすればいいの?


「明日香、走れ。健司は俺が止めておく。お前がホールに着けるまではな」


そう言い、私の手を放す高広。


私ではどうする事もできない。


でも、高広だって、「昨日」すぐに殺されたんじゃないの?