まさか……全段飛ばし?


「赤い人」に追い付かれる理由がわかるような気がする。







「キャハハハハハハッ!」






その声は、高広が投げた携帯電話の方へと向かっている。


その時、私の肩がポンッと叩かれた。


走れという高広の合図だ。


駆け出す高広の手を取り、顔を伏せてトイレから飛び出した。


こんな方法、思い付きもしない。


高広は、普段頭を使わないのに、こんな事には頭が回るんだなと感心して、私達は階段を駆け上がった。


「また同じ手にかかってくれたな。これで二回目なのによ」


ハハッと笑いながら、工業棟から生産棟へと続く渡り廊下に入った時。


渡り廊下の真ん中、私達の前に立ちはだかったのは……月明かりに照らされ、不気味に顔を歪ませて笑う健司だった。


「はああぁぁぁ……み、見つけた……」


その姿に……私は高広の手をギュッと握りしめた。


上体を前に曲げて、私達を見つめる健司は、ひどく猫背になっているように見える。


それでもその顔は、しっかりと前方の私達をとらえ、どうしても逃げられそうにない。