その言葉に、小さくうなずく。


それを見た高広は、トイレから一歩飛び出して、廊下の突き当たりに向けて、開いた携帯電話のボタンを押して、それを滑らせるようにして投げたのだ。






ピピピピピピピピピッ!




ピピピピピピピピピッ!







と、投げられた携帯電話が、アラーム音が鳴らしながら廊下の奥へとすべっていった。


高広は、何を考えてこんな事をしたのだろう。


これじゃあ、来てほしくない「赤い人」が、嫌でも来ちゃうじゃない!


しかし、高広は「赤い人」を待っているかのように、耳を澄ませて立っていた。




「キャハハハハハハッ!」




携帯電話のアラーム音よりも大きく、無邪気な声で笑う「赤い人」。


そして、ドンッ!という音。


階段を何段か飛ばして下りているのだろう。


さらに、ドンッ!という音が聞こえ、一階にやってきたのだ。