私は、タンクのふたを便座の上に置き、そっとそれを取り出した。


タンク内に水が入っていなかったから、カラダは濡れてない。


それは、私にとってはありがたい事だ。


いくら、「昨日」に戻るからと言っても、私まで濡れたくはないから。


「た、高広! カラダ見つけた!!」


トイレ内に響く私の声。


もしも、近くに「赤い人」がいて、声を聞かれていたとしても関係ない。


どちらかがこの左胸を持って棺桶にたどり着けばいいのだから。


私は、左胸を小脇に抱え、トイレのドアを開けた。


それと同時に、女子トイレに入って来る高広。


「あったのか!? やっぱり、俺がしょんべんして正解だったな」


それに関しては、何も文句が言えない。


そのせいで、と言うか、そのおかげでカラダを見つける事ができたのだから。


でも……カラダがある場所に鍵がかかってるって予想は外れたね。


鍵なんてかかってなかったから。


「早くホールに戻ろう!」


私がそう言った時だった。