「それよりさ、今のって『赤い人』だったのかな? なんか変だったんだけど」


「そうか? 歌を唄ってたなら、『赤い人』なんだろ? それ以外に唄うやつなんて……」


歌を唄う人は……いる。


「昨日」の夜、唯一あの歌を唄っていたのは……。


「健司だよ……」


そう、ここに来ていたのが健司なら、納得できる事がある。


作業服がかかっているハンガー。


バーからこれを取るには、「赤い人」じゃあ届かないのだ。


でも、健司なら……。


健司がなぜあの歌を唄うかはわからないけれど、私達は「赤い人」と健司に襲われる。


それだけはわかった。


「今のが健司? なんであんな歌を唄って、俺達を探してたんだよ?」


「高広も言ってたじゃん、健司が歌を唄ってたって」


「そりゃそうだけどよ……」


どう反論して良いかわからないといった様子で、顔をしかめて天井を見上げる高広。


私も健司が私達を襲って来る理由なんてわからない。


わからないけど、見つかってはいけないという事だけはわかる。


「昨日」、高広が殺されたのだから、見つかったら殺されると考えて良いだろう。