部屋の外から聞こえる声が、徐々に遠ざかっていく……。








「まっかなふくになり……」







もう、声は聞こえなくなったけれど、まだ近くにいるかもしれないと思うと、身動きは取れない。


棚の上で、高広に抱き締められたまま……私達は、しばらく動かなかった。


私は考えていた。


さっきの歌を唄っていたのは、本当に「赤い人」なのだろうか?


低く響く、不気味な歌声だから、そうだと思い込んでいたけれど……。


床に散乱する作業服には、ハンガーにかけられている物も多くある。


棚の上から降りた私達は、それを見て違和感を覚えた。


「明日香、その……なんだ。さっきは悪かったな」


頭をかきながら、私に照れたような表情を向ける高広。


私を抱き締めていた事かな?


「あの状況だったら仕方ないじゃん。まあ、ほこりがすごかったけどね。服も髪も真っ白」


パンパンと、ほこりを払う私の姿を見て、高広も制服に付いたほこりを払う。