あの歌が……こちらに近づいてくるのがわかった。








「し~ろい ふ~くもあかくする~」







歌がきこえて、すぐに隠れようと言った高広の判断は正しかった。


バンッ!と、更衣室のドアが荒々しく開けられ、その歌が私の耳に入ってきた。


隠れる場所のない、この更衣室の中で、私と高広は身動きが取れずに、それでも隠れている。


「赤い人」は生産棟の二階に現れたはず。


なのに、校内放送が流れてから、すぐにここに来たとしたら、時間の計算が合わない。


かと言って、「赤い人」を見てしまえば、振り返る事ができなくなる。








「まっかにまっかにそめあげて~」








作業服を床に放り投げているのだろう。


歌が進むにつれ、バサバサと作業服を放り投げる量が増えていく。


この更衣室には、掃除用具を入れるロッカーすらない。


本当に、作業服をかけている棚が3つしかないのだ。