それはわかってる。


だから、壁にもたれて呼吸を整えているのだ。


「ふぅ……もう大丈夫かな? ごめんね、高広」


廊下で聞こえた健司の叫び声のせいか、膝がまだ少し笑っているけど、動けないほどじゃない。


「じゃあ、まずは更衣室を調べるか。この部屋だしな」


そう言って指差したのは、私達の目の前の部屋。


確かに、ドアの上には、「工業科第一更衣室」というプレートが掲げられていた。


私は高広にうなずき、その部屋に入った。


すると……。










『「赤い人」が、生産棟二階に現れました。皆さん気を付けてください』

という校内放送が流れたのだ。


生産棟の二階は、工業棟とつながっている。


時間をかければ、「赤い人」が来る可能性だってあるのだ。


私達は、作業服がかけられた棚を急いで調べ始めた。


「生産棟の二階かよ。またずいぶんと微妙な位置だな」


そう呟きながら、生徒達の作業服をかき分けて、カラダを探す高広。


私はその下の、引き出しをひとつひとつ調べていた。


「どうしてこの更衣室はロッカーじゃないのかな? 作業服がむき出しじゃない」