階段を上って二階、そこから北側に向かって、生産棟の階段の隣にある工業棟への通路。


そこまで、引っ張られるようにして走った。


「これでも必死に走ってるんだよ!? 私が足遅いの知ってるくせに!」


「知ってるっての! 小学生の時も、中学生の時も! お前の足が遅い事くらいな!」


そう言い、私の手をギュッと握ると、さらに速度を上げる高広。


直線で50メートルほどの距離を一気に駆け抜け、突き当たりを南側に曲がる。


そして、すぐそこにある階段を下りて、私達は工業棟の一階にたどり着いた。


「ふぅ、さて……と。どこの部屋を探す?」


高広は、余裕がありそうだけど……私は実力以上の全力疾走で、心臓はバクバク言ってるし、息も上がってる。


少し、休みたかった。


工業棟は、工業科の生徒が主に使っている。


階段を下りた私達の、北側にある大きな部屋、通称「工房」では、生徒達がアーク溶接などをするらしいけど、私には無縁の場所だ。


後は、他の実習室や更衣室、トイレと職員室があるだけ。


部屋数は思ったより少ない。


「少しは落ち着いたか? 早くどこかの部屋に入らねぇと、校内放送が流れるぞ」