「高広、速いよ! 全力で走ってない!?」


西棟に入り、階段を上っている私達。


どうやら、翔太達は東棟の方から生産棟に向かったようで、私の背後に姿はない。


「早く行った方が、その分調べられるだろ!明日香が俺に合わせろ!」


「む、無茶言わないでよ!私の方が足遅いんだから!」


「ったく……仕方ねぇなあ」


そう呟き、速度を落として、高広の手が私の手に触れた時だった。











「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオォッ!!」










という、校舎中に響き渡るような雄叫びが、玄関の方から聞こえたのだ。


その、誰のものともわからないサイレンのような叫び声に、私は思わず身をすくませて、高広の手を握った。


腹部に響き、校舎の窓をも震わせるその声に、恐怖を感じずにはいられなかったから。


「……んだよ、こりゃあ!? もしかして健司か!」


空いている手で耳をふさぎながらも、左手はしっかりと私の右手を握ってくれている。


こんな状況だけど、高広と手をつなぐのなんて小学生の時以来で、少し照れた。


「明日香! しっかり走れ!!」