私の歌を追うように、ノートに書きつづっていく翔太。


「す、すごいなキミは。どうして覚えているんだ?」


驚いたように、そのギョロッとした目を私に向ける八代先生。


不気味だけど、ほめられるとうれしい。


そんな私の隣で、壁を見ていた留美子がゆっくりと振り返って、青ざめた顔を私に向けたのだ。


「あ、明日香……こ、これ!!」


そう言って留美子が指差したのは、「赤い人」の絵。


私は、その絵に違和感を覚えた。


八代先生が描いたという「赤い人」の絵は、うつむいていたのに……。


今は顔を上げてニヤリと笑っていたのだ。


その絵を見て、慌てて留美子に駆け寄る八代先生。


そして、「赤い人」の絵をマジマジと見つめて、ひたいにかいた脂汗を袖で拭っていた。


「本当だ……僕はこんな絵を描いてはいない。まさか、『呪い』はこんな形でも現れるのか」


「昨日、私の携帯に送られた『小野山美子』の記事の写真も、真っ赤になって笑ってました……」


そう言った私を、驚いたように見つめる八代先生。


「もう、何なのよ! こんな所に来てまで、怖い思いをしたくないっての! 八代先生は私達を怖がらせたいの!?」


泣きそうな表情を浮かべながら怒鳴り散らす留美子。