理恵が、「ひとりでやりたくない」と言いたそうな表情でたずねた。


「わ、私は嫌だからね! 絶対逃げてやるんだから!」


留美子だけじゃない、きっと、皆そう思っているはず。


私だって、ひとりでやるなんて嫌だ。


「やってみないとわからないだろ? やりもしないのに、話だけしていても、何も解決しないからな」


眼鏡をクイッと上げて、翔太が時計を見た時だった。







ガタッ。







椅子が、後ろの机に当たる音が聞こえて、遥が立ち上がったのだ。


「え!? もうそんな時間なの!? まだ心の準備が……」


手に持っていたペットボトルを慌てて机の上に置き、口を拭う留美子。


「来るぞ! いいな、皆バラバラに逃げろよ!」


翔太の言葉を合図に、私達は教室を飛び出した。


翔太と健司は教室を出て、東棟へと続く、大職員前の廊下へと曲がり、私を含む4人はまっすぐに走る。


「俺は上に行く!」


「じゃ、じゃあ私は下!」


階段で、高広と理恵のふたりとわかれた。





「明日香、遥来てる!?」