ここは先生が来ない事がわかっているから、ここにいるのが一番安全だと言える。


「このノートは良いな。ここまで書いてあれば、八代先生への説明も楽になる」


私が授業中にまとめていた、例のノートを手に取り、パラパラと眺める翔太。


「へへ……そうかな?」


翔太にほめられると、なんだかうれしい。


これが高広なんかだと、あんたにほめられても……とか思ってしまうところだ。


「俺も、今日、八代先生にする質問を考えた。大きく二つだ。『小野山美子』の事と、健司の異変について。他にもききたい事はあるけど、良いよな?」


「あー、私は何でもいいよ。後で解説してくれれば……翔太と八代先生の話は、難しすぎるもん」


半分諦めているような様子で、柵にもたれかかる留美子。


ここにいる皆が思っている事だろう。


「俺は、あの歌の意味を知りてぇ。何を思って、あんな歌を唄ってるんだ……」


確かに、歌自体が恐怖で、その意味なんて考えた事もなかった。


もしかすると意味なんてないかもしれない。


赤い服がほしいから、血で赤くしている……。


単純にそんな意味だと理解していたから。


三限目の途中。旧校舎の玄関で、私達5人は八代先生が職員室から出てくるのを待っていた。