あの歌が聞こえた……。
どうしよう……私達は、完全に追い詰められた。
屋上は広いけど、入り口がひとつしかないから、私達がこの状況を脱出する方法は限られる。
どちらかが、「赤い人」に狙われるしかないのだ。
私か理恵……次は、どちらかが死ぬ。
「理恵……とりあえず、向きを変えよう。このままじゃ、逃げられないよ」
壁に背中を付けた状態で見つかってしまえば、その分だけ逃げるのにも時間がかかる。
少しでも早く逃げるには、通路の方を向いておく必要があるのだ。
「振り返らなきゃいいんだよね? じゃあ……左に90度、向けばいいんだよね……」
ブツブツと、何か妙な事を呟いている理恵。
理屈で考えれば、そうなんだけど……。
なんて、考えてる場合じゃない。
失敗してもしなくても、死ぬかもしれないのなら、「ここまではセーフ」という指標になればいい。
「じゃあ……それ、やってみようか。せーので、通路の方を向くよ」
わたしの言葉に、小さくうなずく理恵。
「行くよ……せーのっ」
その合図と共に、左を向いた私。