少なくとも、今それを見ている私の目には、頭なんて物は映っていない。


屋上の入り口の横を通り、反対側に行こうとした時だった。






屋上へと上がる階段……そこに、黒い人影が見えたのだ。


今の人影……誰だろう。


反対側の屋上に行く為に、私達は入り口の東側にある、幅の狭い通路に入ってしまった。


隣には理恵。


今の人影が誰かを確認しようと思うと、振り返るか、バックしないといけない。


「理恵、誰かが屋上に来る……」


もしも、それが「赤い人」だった場合を考えて、気づかれないようにささやいた。


「え……まさか『赤い人』?」


私と同じようにささやく理恵。


でも、私にもそれはわからない。


「そうじゃないって思いたいけどね。とにかく来て」


考えがあるわけじゃない。


どうすればいいかわからないから、私は理恵の手を取って歩いた。


そして、屋上の入り口の、反対側に位置する壁に背中を付けて……息を潜め、そこにかがんだ。


そして……。







「あ~かい ふ~くをくださいな~」