そう言っている間にも、歌は進む。


その翔太を見下ろして、留美子はフンッと鼻で笑った。


「あんたが持って行けば? 男の意地があるんでしょ?」


そう言い、西棟の廊下まで後退する留美子。


そして、西棟の一番奥の教室に入ったのだ。


こんな時にまで、留美子は一体何を考えているのだろう。


留美子の代わりに、脚に駆け寄る私。


遥の……左脚。








「まっかなふくになりた……」







そこまで「赤い人」が唄い、もうダメだと目を閉じた翔太だけど……。


突然その背中から、「赤い人」が消えたのだ。
そして……。






『「赤い人」が、西棟二階に現れました。皆さん気を付けてください』






校内放送が流れた。


「な……にが……起こったの?」


状況が飲み込めていない様子の理恵。


「理恵! 振り返っちゃダメだよ!」