少しでも、西棟に近い階段を下りる必要があった。


「でもさ、翔太がどの教室にいるかわからないよね? どうやって探すの?」


階段を下りながら、理恵がたずねる。


「だからさ、私達が行くのは図書室なの! 翔太がどこにいても関係ないでしょ!」


少し強めの口調で、あくまで図書室に行くためと言い張る留美子。


自分自身、翔太にひどい事を言ったという事はわかっているのだろう。


それの発端が翔太だったとは言え、皆に悪いと思って、自分ひとりの力で頑張っているのだ。


留美子も、それくらいはわかっているはず。


だからこそ、音楽室から離れた図書室に行こうと言ったのだ。


生産棟の二階まで下り、壁に背中を付けて、私が廊下の音を聞く。


シーンと静まり返った廊下は、そこに「赤い人」がいないという事を教えてくれている。


「大丈夫……かな? 次の階段まで走ろうか」


と、私がふたりに言ったその時だった。








「うわあああっ!! 離れろ! 離れろよ!!」








廊下の奥の方で……叫び声が聞こえた。


あの声は……翔太?