「まっかなふくになりたいな~」
徐々に、こちらに向かって歩いてきている……。
しかも、南側の廊下か、東側の廊下か、二つが交差しているこの場所では、どちらから来ているのかがわからない。
一か八かもない、音楽室を出た時点で見つかってしまうのだ。
他の、習字室とか美術室に入ってくれればいいのに。
どうして私は、いつも部屋の中にいる時に限って「赤い人」におびえなきゃならないのだろう……。
「ダメ……こっちに来る。ふたりとも、準備室に隠れて」
そのまま、南側の廊下に抜けてくれれば……そう祈りながら、3人で準備室の中に隠れた。
ドアの前で息を潜めて……通り過ぎてくれる事を祈るしかなかったのだ。
「どうか……来ませんように……」
ささやくように祈る理恵。
心臓の鼓動が、壁を伝って聞こえてしまうんじゃないかというくらい……激しくなっている。
そして……。
カチャカチャ……。