私はドアの横にある、照明のスイッチを押してみるけど、やっぱり部屋は暗いまま。


毎日、月明かりが校舎の東側から射しているから、校舎の北側にある音楽室は暗いのだ。


それを確認して、ドアに耳を当ててみる。


ゴウゴウという、何かわからないような音が聞こえるけれど、歌は聞こえない。


「赤い人」は、近くにはいないみたいだ。


「ここにはないね……次は準備室探すから、理恵はそのロッカー調べたら手伝ってよ」


グランドピアノから離れて、音楽室の中にある準備室へと歩く留美子。


歌はまだ聞こえない……。


この調子なら、音楽室を調べ終わるまでは大丈夫かもしれない。


理恵が、掃除用具の入ったロッカーを確認して、留美子を手伝うために準備室へと向かった。


準備室は黒板の横。


音楽室に入って、すぐ左のドアを開けた部屋。


中にはギターとオルガンくらいしか、目を引く物がないらしい。


そんな話を、誰かから聞いたような気がする。


「あ、理恵……準備室のドアは開けておいてね。閉めちゃうと、私の声が聞こえないかもしれないから」


「うん、わかったよ」