「さて……と、音楽室は物が少ないから調べやすいかな?」


室内を見渡して、そう言った留美子。


確かに物は少ない。


グランドピアノと、机、椅子以外は何も置かれていないというシンプルな部屋だ。


……準備室を除けば、の話だけれど。


「ピアノのふたの中に入ってる……わけないよね」


独り言を呟きながら、グランドピアノに近づく留美子。


「留美子、それは『屋根』って言うんだよ。大屋根とか、天屋根とか言われてるけどね」


クスクスと笑いながら、理恵もグランドピアノに近づいた。


「ふーん……そうなんだ?ま、何でもいいよ。早く探そ」


そんな事に興味はないといった様子で、理恵と一緒に屋根を上げた留美子。


私は机の方を探そうと、歩き出したその時だった。






カチャッ……。





音楽室のドアが……ゆっくりと開いたのだ。


そして、ドアが開き、ゆっくりと入って来る人影。


それに気づいた留美子と理恵は、支えていたグランドピアノの屋根から手を放して……ゆっくりと後退した。


私も慌ててふたりの方へと走る。