「……もお手てもまっかっか~」
どこからか……あの歌が聞こえてきたのだ。
その歌が、一体どこから聞こえているのかわからない……。
上? それとも下?
「赤い人」を見てしまう前に判断しないと、私達は振り返る事ができなくなってしまう。
「ちょっと、なんでこんなタイミングで……上? 下?」
焦りながらも、ささやく事は忘れていない留美子。
上か下かはわからない。その低い唸り声のような歌は、本当にどこからも聞こえているようで、判断ができない。
「ふたりとも……下に戻ろ……」
同じように耳を澄ましていた理恵が、突然一階を指差したのだ。
どちらか判断ができないなら、たとえ山勘だとしても、理恵を信じよう。
それで「赤い人」を見たとしても、仕方がない。
私達は、理恵の言う通りに一階に下りた。
そして、生徒玄関の前まで戻ると、その声は聞こえなくなったのだ。
「理恵、良くわかったね……」
「うん……自信はなかったけどね。声が少し反響してたから、同じ空間にいるって思ったんだ」
反響? そんな事まで考えていなかった。