そして、その時間が訪れた。


「来るぞ。今日は何もしてねぇからな。普通に来るだろ」


腕時計を確認して、高広が辺りを見回す。


このドアを開けて来るのか……それとも背後から来るのか。


身構えていた私達だったけれど……。







この昼休みに、遥が現れる事はなかった。








放課後が来ても、遥が私達に「カラダ探し」を頼みに来なかった。


何がどうなっているのかわからない。


もしかして……と、思う事はあるけど、どれも確証は持てないのだ。


「明日香、今日は遥、結局来なかったね」


理恵が呟いた言葉に、「うん」と一言だけ返して、私は空を見上げた。


もうすぐ17時、空もいつものように赤く染まり、本当なら訪れるはずの明日が、良い天気なのだろうなと、思いをはせる私。


「八代先生は17時で帰るんでしょ? そろそろ旧校舎に行こっか」


生徒玄関前の短い階段に腰かけていた留美子が立ち上がり、振り返って旧校舎の方を指差す。


「どんなやつなんだ? 八代っつー先生は。見た事もねぇぞ」