「昨日」の夜に話していた事だ。


留美子が指差す先には、今私達がいる新校舎になる前に使われていた旧校舎の一部がある。


「そうだよね。外に出られないんじゃ、旧校舎に行く方法なんて、ないもんね」


皆考えてる事だと思う。


外に出られる場所がどこかにあって、そこから旧校舎に行けるというなら話は別だけど。


カラダを探す為に「赤い人」から逃げなきゃいけないのに、さらに探し物が増えるのは勘弁してほしい。


できるなら、旧校舎に「カラダ」はあってほしくないというのが本音だった。


「それに、『赤い人』が屋上に現れたって、こんな場所のどこにカラダを隠せるんだか……本当に避雷針に刺さってたり?」


留美子の言葉を、また想像してしまった。


でも、考えられる時に考えておかないと、いざ「カラダ探し」が始まってしまうと、恐怖で考えがまとまらなくなる。


だから、今のうちに考えておくべきだと私は思っていた。


その後、私達は留美子の提案で、旧校舎に行く事になった。


旧校舎は、今は農業科の実習に使われている。


ちなみに私達は普通科だから、用事がない旧校舎はおろか、工業棟に行く事すらない。


今さら、だとは思うけど、「カラダ探し」が始まって五日目にして、ようやく学校の造りを調べるという結論にたどり着いたのである。