前を歩いていた留美子が、振り返って私を見る。


「ごめん、ふたりとも……私『赤い人』見ちゃった。だから、ここから離れるね」


振り返れば「赤い人」が現れる。


振り返らなくても、いずれ「赤い人」がやって来る。


だったら、私がここから離れるしか方法がないのだ。


「え……嘘でしょ? でもさ、振り返らなければいいわけじゃん? だったら……」


留美子は、気を遣ってそう言ってくれているのだろう。


でも、そうじゃない。


「『赤い人』は、こっちを見て笑ってたの……だから、絶対ここに来るよ! 私が囮になるから、ふたりは体育館を調べて! ひとつでも、調べる場所を減らしておいてよ」


私の言葉に、何も言えない様子のふたり。


無理もない……誰だって死ぬのは嫌だし、どうせ死ぬなら、探せるだけ探して死にたいから。


私は、ふたりに微笑んで……その場から逃げるように駆け出した。


入口まで走り、「赤い人」が開けたドアの隙間に身をすべらせる。


体育館を出てすぐにある健司の亡骸を避け、私は走った。


そして、事務所の前の壁にかかっている、学校の見取り図で足を止めて、放送室を探した。


留美子と話していた事だけど、校内放送が流れて、「赤い人」が移動するのか。