外傷は無かった事になるかもしれない。でも、心のキズまで無かった事にはならない。


むしろ、怒りや憎しみといった負の感情は、普段よりも増幅されているような気さえする。


「まあ、『昨日』に戻ったら、健司はぶっ殺す。だから理恵は安心しなよ」


留美子が言うと、本当にしそうで怖い。


「やっぱり、高広に言うの? 健司……本当に死んじゃうかもしれないよ?」


「赤い人」に追われていて、理恵と健司を犠牲にした翔太とはわけが違う。


それでも、高広に言うかどうか、答えは出なかった。


健司は、人としてやってはならない事をしたのだから。


「あー、ここにもない。体育館にはないのかなぁ?」


体育館用の放送室にもカラダは無かった。


小さな部屋だから、入ってすぐに何も無い事がわかる。


「後は、反対側の見物席と、下の倉庫とか更衣室だね。あ、ステージもあるか……」


意外と探す所が多い体育館。


3人で手分けして探せば良いのだけれど、理恵にあんな事があった後だけに、ひとりにはできない。


「でも……下に行くと、見ちゃうよね? 健司の死体」


理恵にも思うところがあるのだろうか……。


自分を襲った健司なんか見たくないと思っているのか。