「それ、翔太も言ってたけど……つまり、『赤い人』が追いかけてる人がいても、『赤い人』を見た人が振り返ったら、そっちに行っちゃうって事だよね?」


考えながら言葉を探している様子の留美子。


「うん、そういう事。そして、しがみ付いた人の所に、必ず戻って来るとは限らないの。『昨日』、翔太がそうだったでしょ?」


倉庫の中に置かれた机や椅子を移動させながら、私は留美子の問いに答えた。


『昨日』、翔太は二階を逃げ回って、健司が振り返ったから追いかけられなくなった。


その後『赤い人』が現れたのは、私達がいた東棟一階。


運もあるとは思うけど……この部屋を探すまでは、大丈夫だと信じようと思った。


結局、二階の倉庫にはカラダは無く、私達は見物席を歩いていた。


倉庫の反対側にある体育館用の放送室に行く為に。


「理恵、大丈夫? 少しは落ち着いた?」


健司に襲われた事は、理恵にとってショックだっただろう。


留美子にピタリとくっついて、離れようとしない。


「うん……大丈夫だよ。それに、今日の『カラダ探し』が終わったら……何もなかった事になるしね」


理恵はそう言って、無理に笑って見せるけど、健司が理恵を襲ったという事実が消えるわけじゃない。