「理恵と留美子は倉庫に隠れて! 何があっても『赤い人』を見ちゃダメだよ!」


私に注意が向けば、ふたりは安全になる。


「明日香は!? 何をするつもり!?」


「私の事はいいから!! 早く行って!」


留美子と理恵が、倉庫の方に走ったのを確認して、私も見物席へと駆け出したその時。


ガシッと足首をつかまれて、私はその場に倒れた。


不意の出来事に手を付く事もできず、床で胸を強打してしまったのだ。


「かはっ!! あ……ああ……」


その衝撃で、呼吸ができない。


苦しくて……辛くて……。


そして、足首からふくらはぎ、太股へと……少しずつ上がってくる、ヌルッとした感覚に、言い様のない恐怖を感じる。


まるで、爪先から、ゆっくりと水に浸かるような、下から上へと浸食されるような不快感。


それが腰まで来た時……。


あの歌が、唄われ始めた。








「あ~かい ふ~くをくださいな~し~ろい ふ~くもあかくする~」







翔太は言っていた、「何度もしがみ付かれた」って。