留美子は、一番前の席に座っている遥に声をかけた。


相変わらずの無表情で……ゆっくりと、正面に立つ留美子に顔を向ける。


「返事くらいしたら? まあいいけど。話があるから、ちょっと付いてきなよ」


留美子の隣で様子を見ていると、遥は一言も発する事なく、椅子から立ち上がった。


返事がないから、付いて来るのか来ないのか良くわからない。


「昨日」翔太が話していた時も、こんな感じだったのだろうか……。


それでも、留美子の後ろを歩く私達の後ろを、ピタリと付いて来る遥。


その姿は、なんだか不気味で、幽霊とでも一緒に歩いているような、そんな気分になる。


「ねえ、留美子……どこに行こうとしてるの?」

行き先さえ教えてくれない留美子の行動に不安を感じたのか、理恵がそうたずねた。


「黙って付いて来れば良いんだって。もうすぐ着くからさ」


さっきから、ずっと階段を上り続けている。留美子の考えがわかったような気がした。


留美子は、屋上に向かっている。


そして、きっと、屋上から遥を突き落とすつもりなのだ。


私の予想通り、留美子は屋上のドアを開けて。