まずは高広と健司の口論。


無口な健司がこれだけしゃべるという事は、高広の言葉に相当怒っているという事だ。


「お前が『赤い人』を見なかったら、死ぬ事はなかったんだろうが!!」


そう叫び、健司を殴り付ける高広。


「ねぇ留美子、止めなくていいの?」


「いいんじゃない? 好きにさせとけば」


理恵の言葉にも、素っ気ない返事の留美子。


本当に、男子達が分裂している。


皆で協力すれば、こんな喧嘩もないはずなのに。


この「昨日」を何度も繰り返すうちに、ストレスが溜まって……爆発してしまう。


そう思っていた時だった。






「あ、そうそう。翔太が笑ってたよ。生産棟に向かった3人が死んだかもって明日香と話してたらね」






留美子が、新たな火種をその中に投げ入れたのだ。


「何? 翔太テメェ! 俺達が死んで満足か? あぁ!?」


誰彼構わず怒りを撒き散らす高広。


どうして皆、喧嘩をするの?


こんな状況なんだから、皆怖くて、不安になってるんだよ?


それを怒りでごまかしたり、人のせいにしたり、私みたいに、仲間外れにされるのが怖くて、何も言えなかったり……。