「ねえ、明日香……私のカラダを探して」


友達の遥がとうとつに言った言葉に、私はとまどいを覚えた。


「ちょっと……冗談だよね? 遥……」


そうたずねても遥は無表情で、それだけ言うとまた別の人に同じ事を言っていた。


まさか、あの「噂」が本当だとは、私はこの時はまだ思っていなかった。


どこの学校にでもある、ただの「学校の怪談」程度にしか考えていなかったから。


でも、今日の遥は何だかおかしくて……。


私は漠然とした不安を感じていた。


もしも昨日、私が遥と一緒にレポートを提出しに行ってたら、こんな事にはならなかったのかもしれない。


「あ、明日香……私、遥に『カラダ探し』をしてくれって言われたんだけど……」


顔面蒼白とはこの事を言うのだろう。


今にも泣き出してしまいそうな表情を浮かべ、友達の理恵が近づいてきた。


怖い話が苦手な理恵にとっては、ただの噂話も恐怖の対象になってしまうのだ。



私の通っている高校にはひとつの怪談話があった。


それは「赤い人」という怪談話なのだが。


「カラダ探し」は、その「赤い人」の噂話に付け加えられたモノだと、この時まではそう思っていた。