クロが安堵したような顔をした。
「やっぱ退院していたんだな」

「うん。良かった・・・」
ゆっくり近づいてゆき、横から祖母の顔を改めて見る。少しやせてはいるが元気そうだ。お茶をすすりながら庭を眺めているようだ。

 祖母の左横に腰をおろすと、太陽の光が気持ちよく顔に降りそそぐ。

「いい天気になったねおばあちゃん。退院おめでとう」

「聞こえないぞ」
クロが後ろで声を出すが無視をすることにする。

「おばあちゃん、蛍だよ。ここにいるんだよ」

 祖母の視線の先に目をやると、そこには若干荒れている庭が見える。雑草がいたるところで生命力を主張しているようだ。

「庭、荒れちゃったね。私がきれいにしてあげられれば良かったのにね」

 涙が目にたまってくる。

 こんなにそばにいるのに、話ができないなんて。