病院を出ると、祖母の家を目指して歩く。祖母の家は病院から歩いて5分の場所だ。古い一軒屋にひとりで住んでいる。

「なんでクロは病院だと思ったわけ?」

「は?俺は病院なんて言ってないぞ。福嶋タキの名前を聞いたお前が勝手に病院に向かっていっただけだろう」

「でも、バス停は分かったわけでしょう?」

 やれやれ、というようにクロは腕を組む。
「ほんっと、人の話聞かないやつだな。俺が分かるのは相手の名前とだいたいの場所だって最初に言っただろうが」

「そうだっけか」
記憶にないが、言われてみればそんな気がしないでもない。