言葉にすれば、それで私は消えてしまう。

 こんなに好きで、こんなに苦しくて、こんなに心を揺さぶられる気持ちを言葉にしなくてはならない。

 息を整えて、口を開く。

「蓮、私ね」

「少し歩こうか」

 蓮がいたずらっぽく笑った。

「え?」

「時間はまだある。ほら、おいで」

 未練解消のタイムリミットを知っているわけはないから、おそらく今の時間のことを言ったのだろう。連が歩き出すのを見て、私も横に並んだ。

 歩幅を合わせてくれる。

 少しの間会っていなかっただけなのに、何年も会ってなかったかのようにその姿が夢のように思えた。