やがて、それは『取引』と呼ばれる自分を正常に保つための作業に入る。一種の、あきらめに近い感情なのかもしれない。

 最後が『受容』、これで人は困難を乗り越える。

 いや、乗り越えるのではなく、受け入れるのだ。

 最後の作業が終わった時、私も自らの運命を受け入れるのだろう。


 気づけば、蓮の姿が見えそうな位置まで来ていた。

「いよいよだな」

 クロの声が低く、そして力強く私を押す。

「うん」

 
 風が最後の抵抗のように、私にぶつかって流れてゆく。