５時になると
作業場のボロいスピーカーから作業終了のサイレンが鳴る。
これも野麦峠に通じるイメージだろうか。

私は｢お先にー｣と声だけ上げ
そそくさとロッカーに走り
着替えて駐車場に向う。

５時１５分。

まっすぐ帰ると
５時２５分。
貴ちゃん帰って来てるかな
微妙。

私の日常は

朝起きて洗濯して
朝ごはん作って
昼ごはんの用意して
髪を洗って化粧して
パートに行って

これが前半。

お昼にパート先から戻って
お昼ごはんを貴ちゃんとふたりで食べて
パート先に戻って

ここから後半

パートが終わって
ハンドルを握って
急いで家に帰って
お風呂を洗って
貴ちゃんの酒のつまみを作りながら
食事の用意して
洗濯物を片付けて

エンドレスな自分。
クルクルと走り続けるハムスターみたい。

早く家に帰って支度をしないと
貴ちゃんに怒られる。嫌な顔をされる。

早く帰らなきゃいけないんだけど

いつも私は家に帰る途中
大きな光が空から降りて
宇宙人が私を捕まえて
空に連れてってくれないか願っている。

もしくは
どこかの秘密結社でもいい
私を誘拐してほしい。

家に帰れない
正当な理由が欲しかった。

貴ちゃんが納得してくれる理由が欲しかった。