職場での貴重な休憩時間は
午前中に15分。午後にも15分。
その間
それぞれトイレに走ったり
煙草を吸いに外へ出たり
ぶぅおーんと不吉な音を鳴らす
壊れそうな冷蔵庫の扉を開け
飲み放題のぬるい烏龍茶を喉に流す人もいたり
人の数ほど
色々な過ごし方がある。
「現代の野麦峠」
幸代さんが嘆くけど
野麦峠を知らない私はリアクションができず黙ってしまう。
「強制労働施設の映画の話で、大竹しのぶが若い頃に出てた」
眼鏡を拭きながら
涼しげな声でインテリ美奈子さんが教えてくれる。
さすが物知り美奈子さん。
そして私より若い桃ちゃんがスマホをいじりながら「イマルの母さん」と、歯茎を見せて補足してくれた。
細長いテーブルを挟み
50代の幸代さん
40代の美奈子さん
20代の私と10代の桃ちゃん。
なんとなくの定位置に
なんとなく休み時間に固まる4人。
パートの内容としては
スーパーやお花屋さんで売っているまとまった花束、よく398円や498円で青いバケツに入っている仏様用の花を、私達はオートメーションの流れ作業で作っていた。
イスに座り
黙々と流れてくる花を手際よく綺麗に並べる仕事。
頭を使わず無になれる仕事。
貴ちゃんの好きなパチンコと似てるかもしれない。
でもそうか
この境遇は
野麦峠なのか
本は出ているかな
図書館で探してみよう。