彼はずっとこの部屋にひとりで居た。
内からも外からもひきこもって。

自分の身を守るだけの弱虫だ。
だけど。

「あなたは、どうする?」

だけどそれでも生きる為に必要な選択だったように思う。
彼みたいに弱いひとは、外の世界じゃきっと上手く生きていけないだろう。
ここでしか生きて、いけないだろう。

彼はあたしの問いにきょとんとしていた。
一瞬何を訊かれているのかわからなかったようだ。

それからひどく小さく、答えを返した。

「ぼく、も…ぼくも、行く…」
「そう、じゃあ」

彼はきっと、上手な生き方を選べないだろう。
どこにもそれが、用意されていないのだから。

だけどそれでも。

「いっしょに帰ろう」

彼の居場所はここではない気がした。
それがどこかも、分からずに。