学校に行ってなくても、呼び出されたらなるべく応じた。
だって殴られるのはイヤだし何よりこわかったから。
昼間に出歩くことは桜塚達と再会して以来本格的に体が拒否していたので、殆ど夜。なぜかそのへんは桜塚達も了承してくれてた。
大抵は遊ぶ為のお金を持ってこいという呼び出しが大半で、後は気まぐれに殴られる為だけに、桜塚たちのもとへ行く。
あの日も、そうだった。
急に「今すぐ金持ってこい」て言われたけれど、外はまだ明るくて。
ぼくは暗くなってからしか外に出られなかったから…だから遅くなってしまったけれど夜になってから、ぼくはお金を持って、呼び出された屋上に向かったんだ。
今までぼくは、ただ自分の身を守る為だけに桜塚達に従って、それがどんな風に巡るかなんて考えたことは一度もなかった。
たとえばぼくのお金が誰かを傷つける為に使われていたかもしれないなんて、そんなこと想像もつかなかったんだ。
“ラヴホ代くれるって言ってたけど、別にどこでも良かった、俺的に。金持って来させるとも言ってたけど、待っても来なかったしさぁ”
ぼくが自分の身を守る為だけに持って行っていたお金が、月子ちゃんを傷つける為に使われていたかもしれない。
ぼくの弱さが、知らず月子ちゃんを傷つけていたかもしれない。
ぼく達の小さな小さな“ひとり”の世界は、ぼく達が想像もつかないような形で繋がっていた。
こんな世界の、隅っこで。