あの日は赤い夕暮れが、残酷なほどに綺麗だった。
呼び出された屋上。
またいつもの遊びだと思ってた。
きっとすぐに、終わるって。
だけどその日は…いつもと違った。
『…傷ついた…?』
日向さんが訊いた。
あたしはふるふると首を振る。
屋上は段々と、暗闇さえ失っていった。
『…だって、いちいち傷ついてたら、キリがないじゃない…これから先だってずっと、大人になったってきっと…苦しいことも辛いことも、たくさんある…それらすべてに傷ついて、立ち止まってたら…前に、進めない…大人になんかなれない…割り切って、ぜんぶ受け入れてやり過ごすのが、一番賢いじゃない…! だって…』
堀越恭子たちと、それからあまりよく顔は見えなかったけど、桜塚たちだったのだろう。数人男子もいた。
男子に殴られるのは苦手だった。
痣がいつまでも残って、消えないから。
それからそこであの人と、八坂昴流とも初めて会ったんだ。
忘れもしない、最悪の出会いだった。
『だって誰も助けてはくれなかったじゃない…!』