日向さんが、書いていたものを閉じカチリと鍵をかけた。
よくみるとそれは、鍵付きの手帳。
おそらく日記帳だ。
4桁のダイヤルを回して、椅子から立ち上がる。
それからベッドの脇で床に膝を着いたと思ったら、何やらベッドの下から箱を引っ張り出した。
さほど大きくはない、四角い箱。そこにもダイヤル式の鍵が付いていた。
その鍵をまたチリチリと鳴らして開け、持っていた日記帳を箱の中にしまい、元のベッドの下に戻す。
そんなに見られたくないのだろうか。
あたしには日記をつける習慣がないからわからない。
それからふとその視線が、あたしを見た。あたしは不意をつかれ、思わず後ずさる。
だっててっきりあたしの姿は、見えないものだと思っていたから。
『……』
『……』
数秒間、見つめ合う。
それから日向さんはゆっくりとあたしに笑いかけた。