――そして、今に至る。

どうしておなじふとんに寝ていたのかは全く記憶にないけれど、途中で元に戻ったのなら、寝ぼけながらでも自分のふとんに入ったのかもしれない。
もうそこは深く考えないでおこう。疲れるだけだ。

とにもかくにも、元に戻ったのだ。
間違いなく自分の体に。

やはり夢だったのかと思いたかったけれど、彼がこうして目の前に居る以上、すべてがまるっと夢だったというわけにはいかないらしい。

「…とりあえず、良かった…」
「そ、そうだね…」

ぼそぼそと小声でしゃべりながら、改めてお互いを見やる。

昨日帰った時にはもうそれどころじゃなくて気が付かなかったけれど、制服のまま寝ていたらしい。
制服が皺だらけだ。
アイロンをかけてる時間はあるかな。

なんにせよ先に彼を帰さなくては。

「念の為玄関まで誰も居ないか確認してくるから、ここでおとなしくしてて。まぁまだ誰も起きてはいないと思うけど…」

あたしの言葉に彼は素直にこくりと頷き、それを確認してからそっと部屋を出る。

時刻は朝の4時半。
あたしと夜勤明けの母親以外の家族は未だ眠っているはずだ。

それでもこんな時間に見知らぬ男が家に居たら不審だし、何より説明が面倒だ。
こっそり帰ってもらうに限る。
お互いに。

弟達の部屋をそっと覗いてみんな眠っていることを確認し、それから台所を覗く。
ごはんの炊き上がる匂いがしていて、反射的にお腹が小さく鳴った。
出来た弟に感謝しつつ台所で少し作業し、それから部屋にそっと戻った。