記憶を少し遡ろうと思う。
そうだ、昨日は本当に、散々だったんだ。
あたしと彼は学校の階段から落ちたことによって(推測でしかないけれど)突如体が入れ替わってしまい、途方に暮れていた。
原因も戻る方法もわからないし、時間は夜の九時を回り、流石に心身共に疲弊していた。
それでもそのまま家に帰るわけには行かないからということで、彼の終電の時間まではそのまま学校で待ってみることにした。
ひとまずは時間の経過に身を任せてみたのだ。
その間、少しお互いの話をした。
そのまま体が元に戻らなかった事態に備えて、必要最低限の素性は互いに知っておくべきだったから。
屋上へと続く階段の踊り場の端と端に座りながら、さほど多くは無い会話をして時間を潰した。
住んでる場所や、家族のこと。それから学校でのこと。
「今気づいたんだけど、あなた同じクラスなのね」
「え…! あ、そうだったの…!?」
「…あなた、あたしの学生証も見たんでしょう」
「あ、えっと、気が動転してたし…気づかなかった…」
確かにうちのクラスには入学してからずっと不登校の生徒がいる。
出席日数が足りなくても進級できたのは、こっそりと受けた試験の結果とその他によるものだと噂を聞いたことがある。
彼…鈴木陽太は、なんの因果かあたしのクラスメイトだった。