部屋に戻ると、なぜか気まぐれに部屋の空気を入れ替えたくなった。
ベッド際にある窓を開ける。ついでにいつもひきっぱなしのカーテンも。
朝の冷たい澄んだ風が流れ込んで、あっという間に小さな部屋いっぱいに満ちた。
それからベッドに腰掛けて、ハンガーにかかったままの制服を見つめる。
開け放した窓の外から、登校途中の小学生や近所のお母さん達の声が聞こえてきた。自転車のベルの音や、散歩中なのだろう犬の鳴き声も。
きっと当たり前の、朝の風景なんだろうなと思う。
ぼくには縁遠い。そこにぼくの居場所はない。
いつからぼくは、“普通”じゃなくなったんだろう。
いつまでぼくは、“こう”なんだろう。
それはだれが、決めるのだろう。
けっきょくぼくは、ここから出れないのに。
だれも守れないし、なんにもできない。
だけどできないと思っていることは決してできないし、やろうとしなければできることなんかひとつもない。
じゃあ、ぼくは何が、したいのだろう。
この部屋で。ひとりで。
答えを見つけられないまま、いつもと変わらない1日が、始まってゆく。
ぼくを置いて。