でも携帯を持てたのはある意味良かった。
朝一番で、彼からメールが届いていたからだ。

この携帯が家族共用であたし以外の人が見るかもしれないってことは、彼の頭に無かったのかわからないけれど、状況報告のメールが、1通だけ。

『風邪をひきました。ごめんなさい』

どうして“ごめんなさい”なのか分からない。
彼はいつもそう。
どうしてすぐ謝るんだろう。
彼自身が悪いわけでもないのに。

風邪をひいてしまったのだって、もしかしたら昨日“彼の体”にムリをさせたからかもしれない。
あたしが彼になっていた時、ムリヤリごはんを詰め込んでしまったし、ハードな買い物にもつき合わせてしまったし、ついでに彼の体の筋肉痛もあたしの所為だろう。

彼の体に負担をかけている半分の原因は間違いなくあたしだ。
ここ数日の無茶のせいで風邪をひいてしまったとしたら、半分はあたしが悪いに決まってる。

なのにどうして、すべて自分が悪いとでもいうように、謝るのだろう。

何より昨日、一度は逃げたはずの彼が、あんなムリをしてまで戻ってきたこと。
吐くほどこわい思いをすると、彼自身が解っていたはずなのに、戻ってきたこと。

それが一番、理解できなかった。