彼の足音が暗闇に消えていく。
そしてその姿も見えなくなった。
コンビニの前には、ぼくと月子ちゃんだけが残った。
だけどもうぼくの意識はほとんど働いてなくて。
月子ちゃんが朔夜くんを呼んで、ぼくはまた月子ちゃん家に連れ帰られたこと。
そして漸く対面した月子ちゃんのお母さんに看護してもらったこと。
それだけなんとなく覚えている。
それからあの人のことも少しだけ話してくれた。
月子ちゃんの部屋で横になるぼくに、少しだけ。
同じ学校の3年生で、八坂昴流(やさか すばる)っていう名前だってこと。
うちの学校で一番の問題児で、最近なぜか桜塚達とも関わりを持つようになったということ。
そして最後にぽつりと落とすように。
「あなたが関わる必要なんて、なかったのよ」
ぼくの頭に濡れたタオルを置きながら、月子ちゃんが小さく言った。
その表情はやっぱり見えない。
何も返せないぼくはゆっくりと意識を手放していた。
ぼくにとって、長い長い1日だった。