「違うよ。」



彼はゆっくりと言った。
ゆっくりと、ちゃんとあたしに理解させるように。


「僕は待ってるんだ。その時が来るのを。その時が来たら明子を連れていく。」


「…その時って…いつなの?」



瞳から零れ落ちてしまった雫が、あたしの頬を流れていった。



「それは僕にも分からない。
僕に許されているのは、見ていることと、待つことだけなんだ。」



見ていることと、待つこと?




何だか気が抜けて、あたしはストンと椅子に腰を下ろす。



「…約束は、二人で埋めた宝物のことだ。」


宝物…ばあちゃんも話してくれたタイムカプセルのことだ。



「必ずまた会おう、その時に開けよう。そう約束した。
でも守れなかった。」



彼は目を閉じて悔しそうに顔を歪ませる。


幽霊…のクセに人間臭くて調子が狂ってしまう。