あの夏を生きた君へ











おばあ様と悠が、驚いた様子であたしを見ていた。




「ちづ…?」


「……っ――…。」





あたしの頬を、涙が伝う。

心は震えていた。



「千鶴さん?」


顔を上げると、おばあ様が心配そうにあたしを見つめている。





「――お会いできて嬉しいです…小夜子さん。」










庭で、ハナミズキが咲いていた。


春の雪が降り続く。




あたしは自分の腹に触れた。


命が聴こえるよ。

こんなにも、温かい。
































――――【後書き】















はじめまして!の方も、

そうでない方も、

こんにちは*


水野ユーリです。






『あの夏を生きた君たちへ』を最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


資料集めや取材などの準備期間から執筆。

ようやく完結の日を迎えることができました。


これまで私が書いてきた物の中で最も長いページ数、
そして書き進めていく中で最も悩んだ作品です。


なぜなら、この作品の大きな山場が明子の視点による【命】の章だったからです。


戦争を知らない世代の私、
自分が体験していないことを書くために資料集めをしました。

また、太平洋戦争当時、二十代だった祖母からも貴重な話を聞きました。


“事実をもとにしたフィクション”である今回の作品、
だからこそ自分に出来る限りのことをした上で執筆したかったのです。











そして、この作品を書こうと思ったきっかけとなったのが、2011年3月11日に発生した東日本大震災でした。


私は関東在住です。

地震発生当時は自宅にいました。


私の住んでいる所でも身の危険を感じるほどの揺れ、余震が何度も続きました。


幸い我が家では物が散乱する、屋根瓦がずれる程度の被害ですみましたが、
ニュースで見る悲惨な光景に言葉も出ませんでした。


それからの数ヶ月は、
家を失ったわけでも、大切な人を亡くしたわけでもないのに、不安で明日が見えない毎日でした。



それまでの私は、主人公・千鶴のように「死ね」とか「死にたい」とか軽々しく口にしていました。

でも、あの日以来そんな自分が許せませんでした。


生きていること、
まわりの大切な人たちが生きていることがどんなに幸せなことか、気づかされました。


命の尊さ、大切さを書きたいと強く思ったのです。











小説の中に、日本から桜を贈ったお礼にアメリカからハナミズキが贈られたというエピソードが登場していますが、ハナミズキの原木は太平洋戦争の経過とともに行方不明となってしまったそうです。


しかし、“日米友好のシンボル”が行方不明であってはならないという有志の人々の地道な調査で、原木が残っている場所がいくつか判明しているようです。


その中に、“神隠しの森”は勿論ありません。

この部分に関しましてはフィクションですが、
もしかしたら今も誰にも見つからず、ひっそりと花を咲かせている原木があるかもしれません。



この作品を書いていく中で、私は命について考えました。


精神的、体力的にギリギリの状態にもなりましたが、本気で自分の作品と向き合うことができました。



「死にたいと思っていた。」から始まり、最後の二行まで、
過去・現在・未来を繋ぐ命の物語。


反省すべき点はたくさんありますが、悔いはありません。
今の私の精一杯だと思います。




この作品が、命について考えるきっかけの一つになってくれれば幸いです。



そして、東日本大震災で被災された皆様に、心からお見舞いを申し上げます。





全ての読者様に感謝を込めて。

ありがとうございました。






2011年9月24日


水野ユーリ














――*素敵なレビューありがとうございます!


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